Beriutiベルルッティ 四代目が奏でるハーモニー

「美術館に作品をご覧に来られる感覚のようです」
 店を訪れる客の様子を見て、スタッフの一人がため息交じりに感想を漏らした。無数の色がまじりあい、大胆かつ繊細な濃淡。神戸店ではアッパーに独特の風合いを添えるパティーヌが靴のみならず壁にまで施されている。店内ですら、美術館に展示される作品といっても過言ではない。
 この色付け技法を生んだのが現当主、オルガ・ベルルッティだ。三代続くベルルッティの門を叩いたとき、オルガはまだ多感な少女だった。女性の職人という数少ない存在。その稀有な才能は靴への情熱が人一倍強かったからこそ芽生えたのだ。そして、その才能は紳士靴に革新的な技法を付与する。それがパティーヌだ。
 紳士靴に<色>を与え、靴磨きにはシャンパンを使うという粋なスタイルの提案。いまだ黒、せいぜい頑張って茶のバリエーションでお茶を濁している紳士靴にあって、オルガの発想とそれを現実のものにした意思は称賛に値する。その靴はアンディ・ウォーホルを始め、多くの洒落者を魅了した。
 まさに、ベルルッティはオルガが紡ぐ「おとぎばばし」なのである。

数年前ミラノのベルルッティで財布(靴じゃない)を買った際に顧客登録をしてもらった。
登録すると全世界で修理してくれるそうです。待ち時間にコーヒー(ちゃんとしたおいしいヤツ)をご馳走になった。
言われてみれば「小さな美術館みたいだった気がする」
この豆知識を知っていれば、お店のお姉さんに「オルガさんが考案した技法はシャンパンで磨くそうですね〜」って会話も弾んだであろうに...。そのそもイタリア語は話せませんが(爆)

平凡社 紳士靴図鑑ベスト50ブランドより

【令和2年11月28日】

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