Stefano Bemer


工房を構えてわずか十年あまりで、イタリア屈指の洒落者フランコ・ミヌッチに認められ、一級の工芸品のみが集うDAギャラリーに永久展示された。
一気に上りつめた様を評して、ステファノ・ベーメルは「天才アルティジャーノ」という形容がついて回る。しかし、それはあまりにステレオタイプな表現であり、彼の本質を表していない。
 靴は本当に難しい。新しげだけを求めればクラシックを逸脱してしまうーそう語るベーメルの真骨頂プロモーションの素晴らしさにある。メダリオンのパンチング一つにとっても、そのバランス感覚には舌を巻く。確かに天性を感じずにいられないが、それは人の何倍も木型を削り、フォルムの何たるかを理解したからこその美しさなのだ。
 当時生業としていた修理の仕事をこなしつつ、夜になると靴職人のもとに弟子として通う二重生活。それは二年にも満たない期間だったが、その後の世間の評価を考えれば驚異的な集中力であり、寝食を忘れて事に当たったであろうことは想像に難くない。「毎日が発見で、楽しかったよ」。彼らはさらりと振り返る。
 ベーメルなりの美学なのだろうが、自ら進んで苦労話はしない。目の前にある靴だけで判断してくれーそういわんばかりの潔さだ。  ステファノ・ベーメルは努力の人なのである。

紳士靴図鑑50ブランドより

【令和3年4月29日】

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