冷えない&蒸れない!ゴアテックスブーティの実力

 靴店やセレクトショップが取り扱うクライミングブーツのうち、クライマーが実際にフィールドで履いている本格仕様のものとなると、これは少数派でしょう?ダナーの「ダナーライト」はその少数派の代表的存在であり、ヘビーデューティーとファッション性が絶妙なバランスで結実した、極めて稀な傑作フットウェアといえます。
 店長の知る限り表題のブーツの流行は90年代前半で、ワークシューズブームが一段落し、「次に来るのはクライミングブーツ」などといわれていた時期でした。その威容がいかにも堅牢そうで、他社のクライミングブーツ(それ風なものを含む)に比して存在感が際立っていたとの印象があります。ということでダナーについて簡単な紹介を。
 ダナー社は1932年にアメリカ中部ウィスコンシン州チペワフォールズでチャールズ・ダナー社らが設立したワークシューズのメーカーを前身にしています。4年後、森林資源が豊富ゆえに造船業が盛んだった西北部オレゴン州のポーランドに移転し(現在も本社は、この地にあります)、そこで働く労働者らに向けてスパイクソールのブーツなどを生産しました。52年には、イタリアから直輸入したビブラムソールを自社製品に仕様。これが、アメリカのシューメーカーがビブラム社の底材を採用した初めての例だったそうです。
 このようにワーク系のメーカーだったダナーですが、64年、ケネディ大統領の提唱もあって、アウトドアを楽しむ人々が急増したのを受け、クライミングブーツの市場に本格参入。比較的緩斜面の多い北米山岳地帯でのロングトレイルに対応するブーツ「マウンテントレイル」をヒットさせるのですが、このモデルがのちに「ダナーライト」へと転生するのです。
 その「ダナーライト」で注目すべきは2点あります。まず、ビブラムの定番ラグソールに、下り斜面で滑らぬよう、土踏まずにラグを追加したクレッターリフトソールをビブラム社と共同開発し、それをスルーハイカー向けのこのモデルに採用したということ。そして第二に、世界で初めて靴にゴアテックスを搭載させたという点でしょう。
 雨などの水分には通さず、汗などの湿気を放出するゴアテックスは、主にアウトドア系アウターのインナーとして多様されていますが、これを靴に取り入れることは技術的に非常に困難でした。しかし、ダナーはゴアテックス社と協業し、このハイテク素材をソックス型にしたゴアテックスブーティーにし、それをアッパー裏に点接着させるべく筋目状に接着剤を塗布するという技術を編み出したのです。これが79年のことで翌80年、このブーティーを備えた製品を一般市場向けに送り出します。そして、そのモデルこそが「ダナーライト」だったのです。
 この機能を備えた「ダナーライト」は激しい雨にさらされてもその浸透を許さず、しかし靴中が蒸れることもなく、常に足元のコンディションを快適な状態にしてくれます。恐縮ながら、筆者が愛履きしてきた感想を申せば、1日中履いて靴の中がジットリすることがなく、足はいつもサラサラ状態。ことに冬場は、足が汗ばんで湿ると冷えてしまいがちですが、「ダナーライト」ならそんな不快な思いをせずにすむことでしょう。思いますに こうしたゴアテックス内蔵の靴は雨の日用としてはもちろんですが、とりわけ足の冷えで悩んでいる人にとっては、まさにうってつけの「冬場の1足」になるのではないでしょうか?  なお、先頃(2012年7月6日)、あのABCマートが110億を投じ、アメリカ本国でダナーとクロスを展開しているラクロス者を買収し、子会社化すると発表しました。となれば、今後、ダナーがどのような展開を見せるのか?大いに気になるところです。

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出典「靴を読む」より

【令和3年4月27日】

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